メイドクラブ

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夏休みだと言うのにお客がいないなんて…どうしたんだろう。 「…最近、向かいに新しいメイド喫茶が出来てそっちにご主人様が流れて行っちゃったのよ。 常連さんたちも奪われたし… もう、お店やめるしかないかな」 「そんな…」 「このメイド喫茶はお嬢の夢…」 「獅堂さん…」 「その夢を潰す輩は許せねぇ…」 「剛久、ありがとう。わたしなら平気だから…そんなに眉間にシワ寄せてたら、ご主人様が怖がって余計に離れちゃうでしょ?」 「お嬢…すいません」 向かいに新しいメイド喫茶… 常連客まで持って行かれるなんて…どんなサービスがあるんだ。 「悲しいねぇ…」 「――って、治樹さん!? いつの間にいたんですか?!」 「話は聞かせてもらったよ。 けど…あの店には関わらない方が身のためじゃないかなぁ――…」 「どうしてですか?」 「いい噂を聞かないからさ」 「何か知ってるんですか?!」 「うん。あの店のオーナーは裏の世界ではわりと有名でね…」 治樹さんは何か知っている。 治樹さんから話を聞いてみよう。 ――――――――――――――― 藍那のメイド喫茶の向かいの店…『メイドクラブ』の店内… 「ひっひひひ…どいつもこいつもバカなご主人様ばっかりだぜ。 下の世話から本番まで…なんでもアリのメイド喫茶を作ったら食い付いてきやがって、まぁ… ボロ儲け出来てウハウハだなぁ」 『メイドクラブ店長の岩渕篤郎は新宿で金貸しをして悪徳な金利をふっかけることで有名だ。 どんな手を使っても貸したお金を回収するのが彼の流儀でね… 常に借用書や担保にしてる土地の権利証なんかを持ち歩いている』 「メイド喫茶業界に進出したのは正解だったかもなぁ…こんなにもバカな奴らが釣れるなんて… まだまだ儲けることが出来るな」 「岩渕店長」 「――!?……英樹かよ。 マネージャーが何の用だ?」 「今月も給料の前借りを――」 英樹が何か言いかけた瞬間… 岩渕は机を強く叩き付けた。 「――!?」 「……おい、英樹…!随分と偉くなったもんだなぁ…あぁん?」 「い、いえ…そんな…」 「誰が雇ってやったのか…忘れたわけじゃねぇだろうなぁ…? テメェは一生俺の奴隷だ…! 俺は売上金の勘定で忙しいんだ…くだらねぇこと言う暇があんならキリキリ働きやがれ!! 分かったら持ち場に戻れよ…!」 「…はい…」 英樹は拳を強く握りしめた。
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