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そんな人間がメイド喫茶の店長をしているなんて信じ難いけど…
「そんなヤツが経営しているもんだから警察も目を光らせててさ…内部調査も行ってるみたい。
今日にも店内に踏み込むってさ」
「そうなんですか!?」
「ほら、見てみなよ。そこら中に私服警官が配置されてるよ」
外に目を凝らすと…確かに普通の通行人とは思えない人たちが…
「ねぇ、あそこにいるのって…」
さらに目を凝らすとそこには…
「狭山さんと瀬川さんだ…!」
「捜査一課がどうして…」
「岩渕篤郎はどんな手を使っても貸したお金を回収する男…
つまり、相手を半殺しにしてでもお金を回収するってこと。
殺人未遂は立派な犯罪だからね」
「誰かが通報したってわけか」
「さらには店員への暴言や暴行も頻繁に行われているとか…
相当な恨みを買ってると思うよ」
治樹さんはトロピカルジュースを飲みながら呑気な口調で言う。
「まぁ…警察の本音は殺人未遂で引っ張ることが出来れば彼の罪を明らかに出来る…といったところなんじゃないかと思うけどね」
「なるほど…」
外の雲行が怪しくなって来た。
―――――――――――――――
メイドクラブ周辺には数名の私服警官がいて中を窺いながら…
突入のタイミングを図っている。
「みんな、躍起だね~」
「岩渕篤郎を逮捕できれば…奴の本当の罪を暴くことが出来る。
だから、躍起にもなるでしょう」
「薬物流通の元締め…か」
狭山は不気味な笑みを浮かべた。
―――――――――――――――
メイドクラブ店内では岩渕篤郎が一人で売上金の勘定をしていた。
「ひぃ、ふぅ、みぃ…」
笑顔で売上金を勘定している姿はまるで悪魔のようにも見える。
「ひっひひひ…たまんねぇな」
そこに怪しげな影が近づく。
その手には刃物が握られている。
笑いを堪えながら売上金を金庫になおそうとしたその瞬間…
目の前に銀色の光が走り抜けた。
「――うおっ!?」
黒いフードの人物が刃物を持って襲いかかってきたのを見た岩渕はその場に尻餅をついた。
「た、助けて…助けてくれ!
いくらだ?!命を助けてくれればいくらでも払ってやるからよ!」
その人物は岩渕の前にゆっくりと腰を降ろしてフードを外した。
「お前は――…ッ!?」
岩渕は胸を押さえながら倒れた。
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