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+葺+
例えば自分の反対側に人が立って居るとしよう。
自分が片手を上げて、その人物も片手を上げるとする。
……その場合、それは恐らく鏡だ。
だがしかし、自分が上げた手に反応もせず背を向けたとしよう。
そうしたらそれは、恐らく対面世界だ。
そして抽象的な表現をするならば自分の対なる存在ではないのかと。
自分が暗闇に潜む事が出来れば、その人は暗闇を照らす事が出来る。
その人が光りに満ちていれば、自分は光りを陰らす事が出来る。
まぁ、つまり言ってしまえば矛と盾の様な存在。
それが俺と・・あの子の関係。
俺が出来ない事はあの小さな子供が出来るし、彼が出来ない事はあの小さな子供は出来る。
矛盾、そして――〝劣等感〟と互いに総じて言う事が出来るだろう。
で、まぁ。
全ての授業が終わって、一旦寮に帰って来た俺は・・早速こーちゃんに部屋から追い出されて居た。
どうしてそんな事になったのか?
……想像で判断して欲しい、と言いたい所だが流石にそれは難しいか。
だから簡単に説明しよう。
機嫌が悪い事に加え、俺が青少年であるこーちゃんのベッドの上に卑猥道具を置いておいたことが、こーちゃんにとって相当問題だったらしい。
そんでついでに、その純情な反応にやれやれと両手を広げた俺の態度も問題だったらしい。
顔を真っ赤にして『おれが寝るまで帰ってくんな!』と言ってクッションを弾丸の様に放ち、俺を追い出したという訳だ。
――で、俺は仕方なくぶらぶらと寮の外を歩いて居る。
空には半分欠ける月が昇り、銀色の光りが俺を照らし出していた。
こうしていると不思議なもので……
自分が今でも老いる事ができないのだという事も、死を縛られて居るのだということも、全てを忘れ去る事が出来る気がする。
そんな、全てを包み込んでくれるような夜の静寂が俺は好きだった。
そんな事をつらつらと考えて居るうちに、いつの間にか学校まで来てしまって居た。
ふと昼間の出来事が俺の頭を過ぎる。
(そういや、死ねない体の少女はどうなったんだ)
んー?と首を傾げ、屋上へと目線を向ける。
……と、そこに銀色の月に照らされながら佇む人影を見つけることが出来た。
これは俺の直感だが――
「例のお嬢さん、かな……」
そう検討を付けて、いそいそと校舎内に入った。
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