13人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
「ねぇ、明日も来る?
来るなら俺もここで待ってるから……また、一緒に話したい」
けれど、その俺の言葉さえも拒絶するかのようにバタンッと扉を閉められる。
「――は、ぁぁぁ……」
聞こえていたのか、聞こえて居なかったのかは分からない。
でも……あの少女が誰なのか、そして普段は何をして居るのか。
そんな事も分からない俺は、ただこの場所で待つしかないのだと思う。
ぐったりとその場にしゃがみ込み、俺はクシャリと自分の髪を掻いた。
「俺らしくねぇよなー・・。
もっと余裕もてよ、馬鹿じゃねぇの。子供じゃねぇんだからさ」
見た目は幼い容姿をしているというのに、中身は酷く大人びて居るあの少女。
そして心の中に孕んだ彼女の闇が、恐らく俺を惹き付けて居るのだ。
だがしかし。
(俺は)
――俺はもう一度、誰かを好きになれるのだろうか?
この手で誰かを抱きしめる資格などあるのだろうか?
その二つの問いに、俺は心の中で『否』と答えた。
それから数日。
こーちゃんは日に日に機嫌が悪くなって、少し突くだけで怒るし。
灰色の髪をした彼女の存在を突き止めるべく聞き込んでみれば、彼氏らしきものは居るらしい(この件に関しては、最近うまくいっていないのだとか)。
灰色の髪に漆黒の髪。
そして真っ白な刀を持つ……俺と同じ闇を背負う少女。
けれどその時の俺は、全く気がついて居なかった。
いや、もしくは考えないようにしていたのかもしれない。
少しずつ惹かれていく自分の心と、それを否定する理性。
その狭間で、いつしか俺と灰色の少女の闇が相成り・・
真っ暗な漆黒の夜となって、太陽を少しずつ陰らせて行っていたなどど。
そしてその陰りを俺は――
取り返しが付かなくなってからでしか気が付く事が出来なかった。
.
最初のコメントを投稿しよう!