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嘘偽りだと言ってしまえば簡単に終わらせられる。
それが俺とあの人の関係だった。
けれどいつしかあの人は俺に、俺はあの人に――
まるで呪術か何かの様に縛り付けられ、精神を冒されて行った。
恐らくあの人も俺も、永劫という長く長く果てのない言葉に狂い始めていたのだろう。
最初俺は、愛しいと思う事こそあれど憎む事など無かった。
限られた命の中で、あの人を精一杯愛せれば良いと……
そんな、純朴で真っ直ぐな心で想っていたのだ。
しかし流れ続ける時間があの人を恐怖に陥れた。
俺にとっては長く短い数年という時であったと思うのだが。
――あの時のあの人にとっての俺の数年は、一体幾日に感じたのだろう?
その数年の間に、俺には様々な変化が訪れた。
長く目蓋の上まで掛かっていた髪は元服の儀で剃り落とされ、顔立ちは少年独特の丸みを帯びた輪郭からスッとしたものに。
身長も一気に高くなり、いつの間にか閉じ篭るあの人を追い抜かしていた。
今思えば・・成長期だったのだから、自分の変化を止めようが無いのだが。
けれどあの人にとって、俺の成長は恐怖そのものでしかなかった。
そして俺は暗い光を宿したあの人に今の体を与えられ、……血も、肉も、全てを生きたまま喰らわれた。
そしてそんな俺を見つけたのが、黒い狐火を持つ一族。
それが幸なのか不幸なのか――。
今となってはどちらとも判断し難い。
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