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+こういち+
ジッと手を見つめる。
「……」
ジッとジッと手を見つめる。
「……うーん・・」
しかし幾ら見つめれど見つめれど、掌に蜘蛛の巣の様に張り巡らされた指紋に変化は見られない。
それどころか、段々と目が疲れたのか焦点が合わなくなってぼやけて来た。
「どうしてだろう」
だから俺はそれ以上自分の手を見つめる事を止めて、窓の外へと目線を移した。
空には〝あの日〟と同じ様に真っ白い太陽が昇っている。
青い空は今日も相も変わらずそこに在って、空気中を漂って居るのだろう。
――もし、もしもの話だ。
世界に空気が無かったら、と考えるとする。
そうした場合、きっとこの世は真っ暗な中にポツンッと白い光を浮かび上がらせるだけで……空なんて物は存在しないのだろう。
きっとあの子が見て居るのはそんな世界なのだろうと思う。
彼女にとっての世界というのは、月から太陽を見つめて居るような物なのだろうか。
ギシッと椅子を軋ませ、俺は背筋を伸ばす。
(だとしたら、)
ちぃ子にとっての太陽とは、ただ暗い空間の中で煩わしく白く照り続ける存在に過ぎないのか。
それとも……彼女にとって唯一世界を照らし出してくれる存在なのか。
というか、また脱線してしまった。
「もー……っ!! そんな事はどうでも良く・・ないけどどうでも良くて!!」
グシャグシャッと銀髪をかき回し、俺は机に突っ伏した。
何の気なしに掴んだ彼女の手。
思っていたよりも柔らかくて、ふわふわしてて……
兄ちゃん達や居候に比べれば遙かに俺の手は小さかったのに、それよりも更に小さくて。
机に突っ伏したまま、俺は自分の手をジッと見つめた。
「あんな小さい手で戦ってるんだよなぁ」
柔らかくて、ふわふわしてて、細くて。
「あ゛ー、もう!!
何で? 何でだし。俺なんでアレだけの事でこんなに変になってんだろ!」
友達だからという理由では片付けられないほどに、強く守りたいと思うし。
それになにより……胸の奥をガリガリと引っ掻かれて居る様な奇妙な感覚さえする。
「まさか、病気!?」
そう一人で叫んだ瞬間。
「――・・痛ァァァ!!」
物凄い勢いで俺の頭に一通の書簡が突き刺さった。
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