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「お役目があるのは、気持ちに励みがつきますわ。でないと…。」
黙りこんで俯く私に笑いを含んだ声が落ちてくる。
「胸のうちはすっかり吐き出したほうがいいと仰ったのは奥様ですよ。」
優しく微笑むその姿に、ぽろりと想いが漏れてしまう。
「そうでもしていないと、遣りきれませんの。人を想う気持ちがだんだん膨れ上がってしまって。」
その名を口にはできない。いつ誰かに聞かれるかと思うと。
けれど、黒い瞳が一瞬揺らぎ、やがて喜びの光に満ちていくのが目に映る。
溢した想いは、伝わった…。
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