431人が本棚に入れています
本棚に追加
/142ページ
「この家は先祖代々、学者として名を馳せたものだ。それが、当主が算盤勘定だなどと!」
「ただでさえ、商人の娘をめとったと馬鹿にされておりますのよ。世間の評判もお考えになってくださいね。」
何も言わずに、ただ頭を下げるだけ。
「紫子、ありがとう。私はよき妻を持ったものだ。」
「よろしゅうございましたわ。お役に立つことができまして。」
久しぶりの優しい言葉。お顔は上の空だけれど、それでも私は嬉しかった。
出会った頃のようにはなれなくても、夫婦として新たな絆を築いていければ…
それでよかったのに。
最初のコメントを投稿しよう!