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「あれからもう一年経つんだね」、舞子は暖人を見つめながら言う。
「そうだな!アッと言う間だった気もするし、永かったような気もするな」、と暖人は応えた。
「ゴメンネ・・ハルト・・・・ワタシ」、「ストップ、辞めろよその話は、もう過ぎた事だろ」。
舞子があの事故のことを話し出そうとして、今にも泣き出しそうな彼女の顔を見た暖人は、「もう何も言うな、全て終わった事だ。お前が後ろめたくなったり、気にしたりすることはもう何も無いんだ」と言い聞かせる。
それでも、少年から大好きな野球や決まっていた進学先を奪ってしまってたこと、受験やリハビリと、不自由で余計な苦労と苦痛を与えてしまったことに、少しながらも彼女の心のなかでの葛藤が、未だ続いているのだ。
「今度また、そんなこと言い出したら、本当に絶交だからな。俺はまたみんなとこうして、同じ学校に通うことができて、ホントに楽しいと思ってるんだ」。
「ただ、あとから知ったんだが、お前が黄葉を第一志望にして、清光女子に行くのを辞めたと聞いて、それこそ俺のせいで、お前や綾芽たちの将来を台無ししたんじゃないかって・・・いつも思ってたんだ」。「暖人・・」。
「私達って、似た者同士だね。相手のことばかり考えて、悪い方ばかり考えちゃうの。でも、だから今の私達がいて、一緒に怒ったり、泣いたり・・笑ったりできるんだよね」。
「そうだな、そのとおりだよ」。(ガキの頃から、その笑顔に何度も救われたことに、お前は気づいて無いだけなんだよ)
「さぁ、帰ろうぜ」、「うん!」 再び歩き出す暖人と舞子には、いつもの笑顔が戻っていたのだった。
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