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「じゃあ、またあとからお邪魔するから」、と言って舞子の家の前で別れようとする二人に、「「あぁ、暖兄ちゃん」」、「「お帰り(なさい)」」、と男女の二つの元気な声が聞こえてきた。
舞子の双子の妹と弟で、双子の姉の喜多野曖(アイ)と弟の喜多野海(カイ)の、小学四年の姉弟だ。
「よぉ、曖と海。元気だったか?」暖人が二人に応えると、
「チョー元気ぃー!」などと言って、いつも暖人に抱きついてくるのだった。
独りっ子の暖人は、年下の子供が自分になついてくるのが嬉しかった。
「ほら、あんたたち、まだ稽古の途中なんでしょ、早く道場に戻らないと、お父さんに叱られるわよ」。舞子の言葉に、「「はぁーい」」と元気に応えると、双子は暖人に手を振って、家の中にある道場へと走って行った。
「じゃあな」、と舞子に手を振って、暖人も自宅へ向かって歩き出した。
舞子の家の先にある十字路を右に曲がった先に、暖人の家がある。距離にして約五百メートル。
角を曲がって自宅が見え始めた。前方をよく見ると、我が家である二条家の門前に、人が立っているのが見える。
来客なのか?家には誰も居ないから、帰ってくるのを待っているようだ。
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