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「あの・家に何か御用ですか?」と暖人が話しかけると、その人物は少し驚いた様子で暖人の方を見てきた。
(女の子!?)こちらを振り向いた姿は、紛れもなく女の子だった。
麦わら帽子を被り、大きなバッグを肩に掛けていた為に、横からの姿だけではよく分からなかったが、白のワンピースを着た少女だと認識した。
暖人が再び少女に話しかけようとした瞬間、少女は持っていた荷物を地面に落とすと、暖人に向かい走り出して、そのまま勢いよく暖人に抱き着くのだった。
突然の出来事に、暖人はその場で尻餅を着いたまま、少女を抱きしめていた。
肩甲骨の辺りまで伸ばした栗色混じりの髪の毛は、サラサラとして優しい光を放っていて、どこかお日さまの匂いを思い出す。
少しだけ日に焼けた肌から覗くワンピースの肩紐の跡が目につく。
整った顔に、キラキラと輝く瞳は宝石のようだ。
「暖人だよね?逢いたかったぁ、ずっと、ずーっと、逢いたかったよぉ!」
少女は暖人の胸に頬擦りしながら話し出した。
困惑しながらも暖人は、「もしかして、茜?六条 茜(ロクジョウアカネ)なのか?」。暖人は半信半疑で尋ねると、「そうだよ、暖人、久しぶり。やっと会うことができたね」、と少女は応えたのだった。
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