162人が本棚に入れています
本棚に追加
茜は明るい性格で、いつも暖人に優しく接してくれていた。いや、暖人だけではなく、隔てなく誰にでも優しかった。
茜は、いつも暖人の手を引いては散歩に連れ出していた。
ある日、公園で転んでしまい、怪我をして泣いている暖人を、水飲み場まで連れていき、汚れた傷口を洗い流して泣き止むまで暖人の頭を撫でやった。
またある日は、暖人にちょっかいをだすいじめッ子に対して、ガチの肉弾戦を挑み勝利を納めたりと、茜はいつも暖人の側にいた。
暖人もそんな彼女の優しさを知っているからこそ、茜から遊びのお誘いを断らなかった。ある時、二人でアイスを食べながら歩いていると、躓いて自分の分を落としてしまった茜。何よりアイスが好物な茜は、この世の終わりの様な顔をしてヘコんでしまった。
そんな茜の顔を見た暖人は、すぐに自分の分のアイスを茜に差し出した。
???・・何故・・って顔をしている茜に、ただ微笑むだけで何も言わなかった暖人。
頬を赤くしながら、「アリガトウ」と、照れ臭そうに小声で呟く茜。それでも暖人はニコニコと微笑むだけ。
二人の間には、余計な言葉は要らなかったのだ。
この二人は、互いがお互いを好きでいて、大切にし合っていた。だから、こんな楽しい日々がこれからも続いて行くのだと、二人はいつも思っていたのだろう。
暖人が居なくなってしまったあの日までは・・・。
最初のコメントを投稿しよう!