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(あれからもう十年も経ったんだ)、と暖人は茜の顔を見ながら、昔のことを思い出していた。
黄葉町(コッチ)に引っ越して来た時、最初は村に帰りたくて仕方がなかった。 茜に会いたくて、毎日のように泣いていた。
あの日、睦美が茜のように優しく暖人の手を引いてくれたときまでは。
時間がたつに連れ、こっちの生活にも次第に慣れ、舞子たち幼なじみグループとの出会いと生活にも馴染んでしまった暖人。
疎遠になってしまった茜のことを、幼き日の思い出として、いつしか心の奥の引き出しに、閉まい込んだままにしてしまったのだった。
自分のことを忘れずにいてくれて、こうしてワザワザ会いに来てくれた幼なじみ。
それを忘れて生活をおくっていた自分に、沸々と沸き上がる罪悪感。
暖人の心は少し苛(サイナ)まれるていた。
そんなことを考えていると、「どうしたの?暖人、お顔が真っ暗さんだよ!?」と茜に話し掛けられ、ハッと我に戻る。すると「だいじょうぶ?」、と心配そうに顔を覗かせる茜の表情がそこにあった。
「い・いや、何でもないんだ。大丈夫!心配ない」と言う暖人に、「そう」と応える茜・・・。しばらく続いた沈黙に耐えきれなくなった暖人が、話をきりだした。
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