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亮太は開口一番にこう言った。「頼む、暖人!大至急、代打で出てくれ」、野球部のユニフォームを着た亮太は、両手をあわせて暖人に頼み込む。
亮太は暖人の幼なじみグループの一人で、黄葉高校野球部の部員だ。短く刈った髪に日焼けの肌、身長180㎝で一年で野球部のレギュラーを張っている、期待のルーキーだ。
「ちょっと亮太ぁ、アンタ何バカなこと言ってんのよ、暖人はいまリハ・・・えーと・・部活中なのよ」、と舞子が言う。
「うンンなこたァ分かってんだよブスッ、だけど今日に限ってメンバーが九人しかいなくて、しかも一人が怪我しちまったんだよぉ。なぁ、暖人ォ、今回だけ何とか頼むよォ・・助けてくれ」。
必死になって頼み込む亮太は、自分が言った失言に気がついていなかった。
暖人にしか目線が向いてない亮太のわき腹に、突如激痛が走る。次の瞬間、亮太が真左りに吹っ飛んだ。
目の前に居た筈の亮太が一瞬にして消えた。と思い込んだ暖人は、その後ろで右足を上げた舞子の姿に、亮太は蹴り飛ばされたのだと理解した。
なにげに言ったブスッの一言を、舞子は聞き逃さなかったのだ。
「誰がブスッだってぇ」。 本気でキレていた。
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