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一条家のバカ息子は、名前を確か清成と言った。暖人が住んでいた頃から有名人で、とにかく自分勝手でワガママだと認識している。
父親の一条時貞は、遅くに出来た一人息子の為、ワガママ放題に育ててしまった。
清成は今年で二十歳に成る筈だ。村長の息子に産まれた者は、成人する歳に結婚するのが村の習わしらしく、茜に目をつけた清成が、掟を利用して茜に結婚を迫ったのだ。
(そんなこと、絶対にさせるものか!)
「茜!」暖人が呼ぶ声に「何?暖人!」と席を立ち暖人の傍に来る茜。
「率直に言うよ。茜・・・村には帰らないで、ここで暮らしてくれないか?」
「どうしたの?いきなり。」
「村に帰ったら、一条の息子と結婚させられるんだろ?そんなの嫌だ。」
「暖人・・・どうしてその事を?」
「私が話したの。久しぶりね!茜ちゃん。」
「睦美さん・・・そっか、睦美さんのお母さんも、木ノ江村の出身でしたね。だから掟の事も・・・。」
「余計な事だとは分かっているわ!でも、私は暖のお姉ちゃんなの。弟と弟の好きな人の困った顔なんて、見てられないの。」
「睦美さん・・・私!」
言葉に詰まる茜。
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