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はるか昔、ドイツ辺境にあるホワイトガーデン城。
随分前に王妃がこの世を去った。
王女を産み落として間もなくのことだったという。
その頃、国では疫病が流行り国民の多くが死んだそうだ。
父も母もその時失った。
もっとも僕は赤子で覚えていないことだったが…。
身寄りもなく食うや食わずの生活の中、仕事を求め城に向かうも幼い僕に働き口などなかった。
行き場もなく倒れ込んだまま何日経ったろう…。
飢えと寒さで体も動かない。
雪が積もり僕の体を覆っていく。
僕は、ここで死ぬのかな…。
それも楽で良い。
辛いことしかなかった。
生きていたって何も……。
「………喋れる…?」
突然話しかけられ体を揺すられる。
僕は動くことも話すことも出来なかったが声の主は僕が生きていることに気づいてくれた。
「お義母様!この子生きてる!生きてるよー!」
意識が遠のいていく中で聴いたその声は、とても澄んだ無邪気な声だった……。
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