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「どした? 何か進展あったか?」
問い詰められても、そう容易に答えられるような話ではない。
何せ、俺にはもうチャンスは無いのだから。
こんな事を浩介に暴露したら今までに無いほど厄介な絡みが襲ってくるに違いない。
「……何もねぇよ」
いずれ言うことになるのは分かっている。
借金取りが言っていた「次」の時が来たら彼に話すことにしよう。
もしかしたら意外と役に立ってくれるかもしれない。
――それまで生きていればの話だが。
「なぁんだ、つまんね」
浩介はそう言って大きなあくびをかいた。
(あ、俺飯買いに来たんだ)
こんな面倒な男と絡んでいてはいつ帰宅できるか分からない。
コンビニの奥へと進み、夕飯を探す。出来る限り安い物を買う。
これが俺の貯金手段である。
数多くの商品が並ぶ中、比較的安価な三つを手に取り、浩介が待つレジのテーブルの上に雑に置いた。
「またこんな食いもんばっか……。よく腹保つよなぁ」
「仕方ねぇだろ? 借金返済の為なんだからよ」
そう言葉を返すと、浩介は「はいはい」と言いたげな表情で会計を始める。その間、レジの周りにあるチラシ類に目を通していた。
あくまで暇潰しに、だ。
「安っ! ……350円だぜ?」
「ああ……」
浩介の言葉を意識せずに返事をする。
「おい、何見てんだ?」
暇潰しに見ていたはずのチラシ類のある一つに目が奪われていた。
「……これ、何だ……?」
視線を向けっぱなしのそのチラシを指差した。
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