Act.3「二回戦:逃奪ゲーム」

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「また会ったな、谷村」 彼は昨夜、施設の監視体勢を教えてくれた藤野であった。 「藤野。あんた、一人なのか?」 「ああ。残った三人の所に入ればいいと思ってな」 合計プレイヤー数は700人。四人組は175個作れて、余りは無し。 つまり、制限時間に間に合えば、早かろうが遅かろうが確実にチームは出来上がるのだ。 しかし、なぜ藤野は最後の最後まで組まずにいたのか。 その冷静な姿勢――何か策でもあるのだろうか。 「何で今まで組まなかったんだ?」 「大抵、さっさと組んじまう奴らほどチーム構成を特に気にしない。対して、組むのが遅い連中はこれからのことを考えて、面子を気にすることが多い」 彼の言うことに間違いは無かった。 確かに、構成を追究すればするほど結成に遅れが生じる。 そして俺も残りの一人を厳しく選ぼうとしていた。 「勝手な判断だが、お前たちみたいな遅れ組に入ったほうが安心できると推測した」 (『遅れ組』って……) 口調はともかく、ここまで適切な判断ができている藤野こそ、俺のチームの四人目に相応しいと思った。 「組んでくれるか?」 俺は改めて問う。 「そこのお二人さんが良ければな」 そう答えた藤野は、俺の後ろにいる千晴と黒崎さんに目を向ける。 「あ~私で良ければ、宜しくお願いします」 「頼っちゃいますが……ぜひお願いします」 二人は快く藤野の参加を受け入れてくれた。
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