2756人が本棚に入れています
本棚に追加
/339ページ
「また会ったな、谷村」
彼は昨夜、施設の監視体勢を教えてくれた藤野であった。
「藤野。あんた、一人なのか?」
「ああ。残った三人の所に入ればいいと思ってな」
合計プレイヤー数は700人。四人組は175個作れて、余りは無し。
つまり、制限時間に間に合えば、早かろうが遅かろうが確実にチームは出来上がるのだ。
しかし、なぜ藤野は最後の最後まで組まずにいたのか。
その冷静な姿勢――何か策でもあるのだろうか。
「何で今まで組まなかったんだ?」
「大抵、さっさと組んじまう奴らほどチーム構成を特に気にしない。対して、組むのが遅い連中はこれからのことを考えて、面子を気にすることが多い」
彼の言うことに間違いは無かった。
確かに、構成を追究すればするほど結成に遅れが生じる。
そして俺も残りの一人を厳しく選ぼうとしていた。
「勝手な判断だが、お前たちみたいな遅れ組に入ったほうが安心できると推測した」
(『遅れ組』って……)
口調はともかく、ここまで適切な判断ができている藤野こそ、俺のチームの四人目に相応しいと思った。
「組んでくれるか?」
俺は改めて問う。
「そこのお二人さんが良ければな」
そう答えた藤野は、俺の後ろにいる千晴と黒崎さんに目を向ける。
「あ~私で良ければ、宜しくお願いします」
「頼っちゃいますが……ぜひお願いします」
二人は快く藤野の参加を受け入れてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!