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いざ廊下から出てみると、ロビーには人気やマネキンロボットの気配も無く、静けさが漂っている。
「あまり音を立てないようにな」
藤野の指摘を聞き、この広い空間に僅かに反響する足音を意識しながら進むようにした。
ロビーは多数の廊下に繋がっており、どこから捜索していくべきか迷う。
「……とりあえず、片っ端から見てみよう」
俺が先頭に立ち、右端の通りから目を当てていくことにした。
もうこの時点で途方に暮れている。
脱落の恐怖を抱えながら、これほどに大量の部屋を一つ一つ回っていく――。
制限時間を2日間にするだけはあると、今になって思う。
「くっそ……次だ! 次行くぞ!」
その廊下には同じく捜索をする一チームがいた。いくつも並ぶ部屋を隈無く探索していたようだ。
「あんな大声出したら……」
千晴は目の前のチームを見つめながら言った。
確かに、普通に声を出しても響いてしまう廊下なのに、あの声量は危険だ。
一時の油断が"奴ら"を誘き寄せてしまうのだから。
「おい……何か聞こえないか?」
先ほど大声を上げていた男が耳を澄ませる動作をし、チームメンバーを静めた。
「…………あ、何か聞こえるな」
「……足音……か?」
そういった会話が彼らから聞こえる。
当然、音の正体を確かめたく、俺も周囲の音に聴覚を研ぎ澄ませた。
「……何だ?」
「どうしたの、隆次郎君?」
聞こえる。恐らく彼らが耳にしている音が聞こえる。
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