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皆は全力で廊下を駆け出す。
マネキンが動いている。俺にとっての『恐怖』が追いかけてくる。
――怖い、怖すぎる!
走り始めてまだ数秒しか経っていないのに、心拍数が急激に上がったのを感じた。
「くそっ、速い!」
思わず俺はそう言葉を吐く。
いくら走っても奴との距離はこれ以上開かない。
そのままロビーに戻るような形になってしまった。
「どこに逃げる!?」
共に走っている男が大声で言った。
先ほども見た通り、ここには複数の道がある。
「こっちだ! お前らも一緒に行くぞ!!」
男の問いに対し、藤野が目の前の道を指差して唐突に答えた。
どんな考えがあってそう判断したのか。
「曲がり角に入ったら隠れろ!」
「隠れる場所なんかあるのか!?」
背後で異常な足音を響かせるマネキンロボットから逃げつつ、俺は藤野に聞いた。
向かう道の先には曲がり角がある。
「曲がってすぐ左右に一つずつ部屋がある!」
彼は何故そんな事を知っているのかは後にして、その二つの部屋に逃げ込んでやり過ごす作戦ということは理解できた。
「よし、やろう!」
男は作戦を呑んだようだ。
成功する確証は無いが、今は彼を信じるしかない。
曲がり角が迫る。
「曲がれ!!」
藤野の掛け声に合わせ、一勢に進行方向を直角に曲げた。
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