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一切の感情を持たぬその悪魔は俺たちのいる部屋の前を横切っていった。
何とも言えぬ衝動が、隠れていた俺に廊下を覗かせようと奮い立たせる。
悲鳴が染み渡る状況が気になっていたのだ。
「ハァ……ハァ……駄目だぁ……」
そっと顔を廊下に出して状況を確認し始めた時、逃げる一人の男が嘆息を漏らした。
彼は腹部を手で抑えながら、だらけた走りを見せている。
しかし、他の同士はその状態に目もくれずに逃走し続けていた。
「ま…………まって……くれぇ……」
その小さな声は三人には届いていないようだ。
唯一聞いていたのが、奴だ。
徐々にスピードが落ちていく男。
それに気を使うことなく、速さを保つマネキンロボット。
二人の間隔がとうとう2メートル近くになった頃、マネキンロボットの手が異様な変形を遂げる。
そして、明らか"手"ではなくなった部分はバチバチと音をたぎらせる電気のようなものを出すものへと変形した。
――まるで、スタンガンのような。
「ツカマエター!」
「!!」
衝撃を受けた。
「グァァァァァァァァァ!!」
この距離からでも分かる。
――彼は、鬼に捕まっていた。
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