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苦痛を叫ぶ男は感電で大きく震えている。
しかし、ただ麻痺させるものではないのは一目瞭然だ。
電気の威力は異常なものであった。彼の体から出てくる煙がその証拠だ。
(むごすぎる……!)
マネキンロボットの容赦無しの攻撃を浴びる男はみるみる内に黒く焼け焦げていく。
こんなのをずっと見ていられるほど俺の精神は強くはなかった。吐き気が俺を襲う。
――こんなの、まるで殺人じゃないか!!
そこで、あることを悟る。
俺が今まで"脱落"と呼んできたそれは、本当は……。
突如、悲鳴と電撃音がピタリと止んだ。
逸らしていた目を恐る恐る戻す。
シュー、という音を立てながら、黒焦げになった男は地面へと倒れた。
そして、隣のマネキンロボットは攻撃を終えたかのように武器を普段の手に変形させる。
「うっ……」
俺は、そこにある黒くなった体の無惨さを受けすぎたせいか、吐き気が声になってしまった。
慌てて口を押さえるが、その過ちは既に奴に聞こえていたようだ。先ほどのようにマネキンロボットの首が瞬時に真後ろに回る。
(まずい……!)
部屋から出していた顔を引っ込め、息を凝らす。
直後、奴の足音が耳に入る。それはゆっくり、且つ確実に俺に近づいてきていた。
(頼む……頼む……!)
来るな――必死で願う。
俺は部屋の中。逃げ場は、無い。
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