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「翔さん、ちょっと待って!」
「おう、どうしたよ」
先を急ぎたい気持ちも強かったが、とりあえず返事をした。
「あの……えっと、」と口ごもっているので、言葉が纏まるまで待っていると、優羽奈は続けた。
「昨日は、久しぶりに帰ってきてくれたのに、なんか、暗い話ばかりでごめんなさい」
頭を下げる彼女に向かって、翔は笑みを湛えながら返した。
「何言ってんだよ。……今日もお前に会いに“真っ直ぐ帰ってくる”から、待っててくれや」
そう言いながらペダルを漕ぎ、振り返れば、優羽奈は満面の笑顔で両手を大きく振っていた。
優羽奈の笑顔を見たのは、彼の生涯に於いてこれが最後となる。
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