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 操作フィルターの役割は、端的に言えばエネルギー、すなわち統括者達が運命操作のために発する、強大なエネルギーの濾過装置というところだ。  何故に濾過が必要なのかというと、そのエネルギーは悪魔の体内にて精製された天界の物質であるため、例え幸運の方でも手を加えずに下界に放出すれば大変な事態に陥るからである。  さて、これだけを言うと、統括者達というのは天界に於ける頂点の存在のように思われるが、実はそんな彼らをも支配しているものが一つだけある。  それは、天界の鉄の規制。  規制と言っても、悪魔達が自分達で定めた口約などではない。  ここで言う規制とは、今は亡き神の残留思念の意だ。  つまり、神が死ぬ間際に天界に放った呪いのような、しかし天界の平和を考慮した思念である。  それを簡潔に訳して羅列すると、以下の通り。 一、秀でた者達は、皆で協力し天界を束ねよ 一、他の者達は、秀でた者達に従い自らの勤めを果たせ 一、運命操作の業を疎かにする者には、“私が”死の制裁を加える 一、悪魔は、決して仲間同士で争ってはならない。同志を死に至らしめた者には、“私が”死の制裁を加える  他にも数多の規制が存在するが、主な重要事項はこの四つだ。  一見すると何の欠陥もない規制に思えるが、死の間際の短い時間で取り決めたものであるが故に、あまりにも重大な欠落点があった。  その欠落点のために、今天界は大きく揺れ始めているのだった。
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