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「ち、違います!上着と鞄を」
不思議そうに言われたものを渡す藤堂。
「くっ癖なんですから、勘違いしないで下さいね!父によくしてたんです」
「ほぉ」
軽くにやっと笑うと彼は先にリビングに向っていった。
帰ると言えなくなり、仕方なく、またその背を追う。
「クローゼットは寝室ですよね?」
「あぁ、入れておいてくれ」
「はぁい」
見られてもやらしいものはないといった感じでさらりと言う。
少し出しゃばりかなと悩むだけ彼女は無駄だ。
クローゼットにそれをしまうと、リビングに戻ってきた彼女は、藤堂と少し離れて絨毯に座った。
部屋は紙の擦れる音しかしない。
忘れかけた緊張が再びよみがえってきた。
もう少し離れて座れば良かったと後悔したとき、藤堂が視線をこちらに移した。
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