【第1話】最悪な出会い

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「ち、違います!上着と鞄を」 不思議そうに言われたものを渡す藤堂。 「くっ癖なんですから、勘違いしないで下さいね!父によくしてたんです」 「ほぉ」 軽くにやっと笑うと彼は先にリビングに向っていった。 帰ると言えなくなり、仕方なく、またその背を追う。 「クローゼットは寝室ですよね?」 「あぁ、入れておいてくれ」 「はぁい」 見られてもやらしいものはないといった感じでさらりと言う。 少し出しゃばりかなと悩むだけ彼女は無駄だ。 クローゼットにそれをしまうと、リビングに戻ってきた彼女は、藤堂と少し離れて絨毯に座った。 部屋は紙の擦れる音しかしない。 忘れかけた緊張が再びよみがえってきた。 もう少し離れて座れば良かったと後悔したとき、藤堂が視線をこちらに移した。
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