【第3話】胸の枷

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朝、廊下を歩くだけで皆が立ち止まり挨拶をするその人物は今日もにこりともしない。 ただ一言、おはようと発する。 「あーあの冷たく素っ気ないところがいいよねー」 とファンの女子は口々に言った。 「どこがいいのよ?全く」 それを見て呆れる鈴。 ドアのノブに手を掛けると、誰かの気配を感じて振り向いた。 「おはよう、すず。俺には挨拶は無か?」 軽く意地悪に微笑んで顔を覗きこむのは、先程まで皆の視線を集めていた人物。 「うぅ…気付かなかっただけです」 気付かないはずが無い。 圧倒的存在感がある彼に。 「そう…これからは気付かないふりもしていられなくなるぞ」 「どういう…意味ですか…?」 意味深な言葉を残して、彼は先に仕事場へ入っていってしまった。 「なんなのよ…全く」 朝から心臓に悪い!と首を振りながら藤堂を考えないようにする。
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