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深く響く男性の声。
そして彼女の腕を掴むと、自分の方へ抱き寄せた。
その勢いで、彼の懐に顔が埋もれた。
「おぉ、悪い悪い…気分が悪そうだったからね介抱しようかとねハハハハハ」
中年の男はごまかしながら、走り去っていった。
彼女の肩に回された手がどけられ、すぐにひき離された。
僅かに安堵した彼の温かさが離れて胸が締め付けられる。
顔を上げて見上げると、彼女を救ったのは藤堂湊だった。
「!!」
「チャラチャラしている上に馬鹿とまできたか…本当に救いようのない…」
額に手をあてがうふりまでしてみせる彼に、酒で理性が利かなくなってしまっている彼女は逆ギレをした。
「今日は私の誕生日だったんですぅ!お酒は好きじゃないけど飲まなくちゃいけなくて!酔っ払ったのもさっきのオヤジもみんなぶちゅーのせいです!!」
見事な責任転嫁だ。
「……」
彼は無言で彼女を呆れた目で見た。
「らぃたいねぇ!チャラチャラした髪は自毛なんです!私は…」
「ぶちゅーって部長か」
軽くツッコミをサラリといい、彼女の次に続く言葉を無視した。
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