【第1話】最悪な出会い

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深く響く男性の声。 そして彼女の腕を掴むと、自分の方へ抱き寄せた。 その勢いで、彼の懐に顔が埋もれた。 「おぉ、悪い悪い…気分が悪そうだったからね介抱しようかとねハハハハハ」 中年の男はごまかしながら、走り去っていった。 彼女の肩に回された手がどけられ、すぐにひき離された。 僅かに安堵した彼の温かさが離れて胸が締め付けられる。 顔を上げて見上げると、彼女を救ったのは藤堂湊だった。 「!!」 「チャラチャラしている上に馬鹿とまできたか…本当に救いようのない…」 額に手をあてがうふりまでしてみせる彼に、酒で理性が利かなくなってしまっている彼女は逆ギレをした。 「今日は私の誕生日だったんですぅ!お酒は好きじゃないけど飲まなくちゃいけなくて!酔っ払ったのもさっきのオヤジもみんなぶちゅーのせいです!!」 見事な責任転嫁だ。 「……」 彼は無言で彼女を呆れた目で見た。 「らぃたいねぇ!チャラチャラした髪は自毛なんです!私は…」 「ぶちゅーって部長か」 軽くツッコミをサラリといい、彼女の次に続く言葉を無視した。
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