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「もぉ…呂律がちょぉっど回らなかったんですぅぅ!ぶちゅーは…」
藤堂は彼女の頭を撫で始めた。
「ぶちゅーは?なに?」
無表情な彼と不釣り合いなその行動と言葉に目を丸くする鈴。
「部長は………悪くない…………です」
「宜しい」
少しだけふと笑い、彼は離れた。
鈴は撫でられた所を右手で触れ、俯いた。
自分が悪い、間違っていると思い知らされた。
言葉数はそんなに交わしてはいないのに、自然と彼女をそう思わせたのはなぜだろう?
そして、暫くするとガタンゴトンという音が段々近付いてくる。
「あ」
二人のすぐ横を最終電車が通り越していった。
「………」
無言でお財布の中を確認する鈴。
「千円札しか入ってねぇ」
彼女は、軽く馬鹿にするような彼をきっと睨み付け歩きだした。
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