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「ゲーム?」
「そうだ。」
健の言うことをまとめると、そのゲームに登録すると、精神空間と呼ばれるステージのようなものに連れていかれ、そこで敵と戦うことになるらしい。
そうしてクリアすると願いが叶う。
そんな夢みたいなことを語る健の横顔がまじめすぎて、俺は喉の奥をクツクツと鳴らし笑ってしまった。
「滑稽だろうな。」
健は続けた。
「しかし本物らしい。
俺の知り合いが現に願いを叶えている。」
「へえ、どんな願い?」
「それは言えないらしい。」
もう限界だった。
「アハハハハ!俺にはお前がかつがれてるか、そいつがドラッグやってるとしか思えねーよ。
登録なら勝手にどうぞ。
プロフィールとか大体わかるだろ?」
「俺はお前のメールアドレスも知らないが。」
「そーいえばそうだっけ。そのくせこんな時だけ誘うの、お前もしかしてボッチ?アハ。
ごめんごめん!そんな訳ないよね。
この有名モデル阿佐ヶ谷育さまのお兄様でいらっしゃいますもんね。
ボッチなんて、まさかそんな。アハハハハ!」
健はバツが悪そうに言った。
「俺の友達が少ないことは今は関係ないだろう。」
「あー!そーでしたね!
じゃ、俺は全くきょーみねーから、お好きな様にお一人で寂しくどうぞ!」
「わかった。
では俺一人で勝手にやるからプロフィールを教えてほしい。」
「プロフィール?そんなもんその辺りの雑誌見たら載ってるっつーの!
おばさんがスクラップしてんの知ってるでしょ!」
俺は居間を後にして、二階の自室へと向かった。
なんかムカつく。
こういう時はヘヴィメタルをガンガンにかき鳴らし、大画面で武士を斬り倒すに限る。
階段を上る俺の耳に健の呟きが届いた。
「育のやつ・・・雑誌ではいつも身長さえ偽っているというのに・・・。」
俺は今日斬り倒す敵将を決めた。(あのタイボクバカに似てる堅物をいじめてやる)
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