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――とりあえず、ここからはどうしたら出られる系なの?
――体験者によると、五分ほどで元の場所に戻れるそうだ。
「すげえ、マジでテレパシーおもしれーわ!」
風邪を引いて声が出なくても、会話できるわけだ!
マジでマンガみたい!
はしゃぎかけた俺は、あることに気付いて表情を凍らせた。
――待てよ、全部筒抜けってことは・・・
「参加者にはおとぎ話に因んだ特殊能力が与えられる。
中には物理法則を無視するようなものもあるそうだ。
しかし現実世界には適応されない。」
???
頭の中にハテナマークが並ぶ。
なんか難しいんですけど・・・。
――わかりやすく言うと、俺達のテレパシーは精神空間の中でしか使えないってこと。
「つまり?」
「お前が心配しているようなことは起きない。」
――お前がユキやトモミやマユと寝たとしても、俺にはわからないってことさ。
「お前が画面の向こうの彼女とイチャイチャしても俺にはわかんねーってことか。」
――そういうこと。
浅い仲じゃないモデル達の名前を挙げられ、動揺した俺は、健に対抗しようとしたがニヤリと笑われあしらわれてしまった。
てか、こいつ熱心にパソコンに向かってるらしいとは聞いてたけどエロゲームばっかしてたのかよ!
そう考えると、ただのエロゲじゃないとか、文学とか人生とかいう単語が頭に流れてきたが、今度は俺が健をあしらう番だった。
あと、やっぱ俺には絵に描いた女のナニがいいのかわかんない。
まあわかりてーとも思わねーけど。
下らない話で盛り上がっていると、精神空間が崩れ、元いた部屋に戻った。
健は下の階に戻っているだろう。
例の大量虐殺ゲームに手をのばしかけた体勢に戻った俺は、一度手を引っ込め、一階に降りることにした。
健と話したいことがある。
こんな気持ちになったのは十年ぶりだと思った。
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