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「なあ、健。」
健のいる一階へと急いで向かった。
試しに心の中で悪口を並べてみたが、伝わった様子はない。
やべ、マジでホンモノじゃん。こんなおもしろゲームならもっと早く教えてくれてもよかったのに!
なんてことを考えながら健に伸ばした手が振り払われたということを、俺は一瞬理解できなかった。
健はこちらを見なかった。
こいつに無視されるとか。いつもならつっかかるけど、今日はないだろ・・・。
さっきまであんなに仲良く喋ってたじゃん。
俺、ちょっと期待しちゃったじゃん。
健がこちらを見た。
しかし一言も発しないまま自室へと戻っていった。
やり場のないもやもやを感じる。
「あらあら、相変わらず仲が悪いのね!
せっかく男前の兄弟なんだから、仲良くしないと!」
いつのまにかババアが帰って来ていて、俺が載った雑誌を抱えてすり寄ってきた。
いつもなら、俺はババアが喜ぶようにふるまえる。
しかし今の俺にはババアの機嫌を伺うことができなかった。
案の定、その日の夕食は抜きにされた。
仕方がないから一人で深夜インスタントラーメンをすすった。
釈然としねぇ。
なぜ健が突然俺をムシしたりしたのか。
それは部屋に戻りさえすればすぐにわかることだったのだが、勝手に拗ねた俺はリビングでぐっすり寝てしまい、結局それを知るのは翌日の夕方だった。
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