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翌朝。
ぼくらは学校へ向かわなければいけない。
毎朝のことだけど憂うつだ。
姿見の中のぼくは、学ランのホックを一つ留めてため息をついた。
ぼくは
153センチしかないけど
男だ。
「環ー!伊織ちゃんが来てくれたよ!急げ!!」
「はぁーい。」
ぼくは、リビングの弁当箱を取って玄関へ向かった。
「おはよ。」
玄関で伊織が笑っている。
今日も茶色のブレザーにチェックのスカートをはいている。
伊織は179センチもあるけど女の子だ。
ぼくたちは、性を間違えて生まれてきた。
ぼくは男の子として生きられない。
自分のことを確かめる為に進んだ男子高で、ぼくはそう悟った。
伊織も同じだった。
同じマンションの隣部屋に住んでいる伊織とは昔から仲がよかった。
伊織がぼくと同じ気持ちを抱えていることに気づくまでに時間はかからなかった。
同じ傷を持つ二人が恋愛感情を抱くようになるまでにも、時間はかからなかった。
ぼくたちの秘密を他には誰も知らない。
二人だけで育んだ気持ちはぼくたちが実を結ばせてやる。
ぼくは玄関から一歩踏み出した。
伊織が笑って迎えた。
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