従者の章 1

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いつ見ても迫力のある空間だ。 玉座とでも呼ぶべきだろうか。 女王(便宜上こう呼ぶ)が座すスペース(何と呼ぶのが正しいのか?)は宙に浮いている。 か細い支柱が放射線状に何本も生えてはいるが、女王が君臨している高さを支えられるとは到底思えない。 例の不思議パワーが関係しているのだろうか。 ワカラン。学生時代から俺は根っからの文系タイプだったから、建築的な分野には疎い。 「青山哲也、お前4代目の赤い靴ペアに接触したな?」 やっぱりバレてたか。 まあ、ここに呼ばれる地点で薄々わかってましたけどね。 本当は俺たちがプレーヤーに触れるのはご法度。 誰かに余計な情報を与えると、ゲームバランスを崩してしまうことになるから。 それは女王陛下の望むことではない。 女王はあくまでも自然体の勝負をご所望だから。 だから、俺は自分に罰が与えられるのだと覚悟を決めた。 しかし、掛けられたのは思いもよらぬ言葉だった。 「まあよい、好きにしろ。」 えっ。 思わず声が漏れた。 「口答えをするな。折角の興が削がれるではないか。」 女王は涼しい顔で傍らのペットをあやしている。 (ペットと言ってもかわいらしい犬猫ではない。よくわからない猛獣のような動物だ。 噂によると草食らしいが・・・。) 「よ、良いのですか?」 思わず聞き返してしまった。 それが女王の気に入らなかったのか、足元の床が泥のようになり、俺の足はくるぶしまで埋まってしまった。 まずい。折角拷問は避けられそうだったのに。 冷や汗が伝うのを感じる。 どうにかして逃げないと。逃げたい。逃げたい。逃げたい。 と、足が解放された。 女王は俺を捕らえていた時とは別人のように軽い笑い声を立てている。 俺はというと、女王に構う余裕もなく、その場にへたりこんでしまった。
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