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アイツが帰ってくる。
そう思うだけでいつも気が狂いそうになる。
暗いリビングのテーブルに置かれたメモを思い出した。
『一組倒せ』、書かれていたのはたった四文字だったけど、美月の足を震えさせるには充分だった。
ワタルが帰ってくるまでになんとかしないと、ミヅはどんな目にあわされるかわかんない。
美月は、目の前の敵を睨み据えた。
「総ては、女王の名の元に!」
高らかに対決の開始を宣言する。
目の前の男は狼狽えたようだった。当然。
一人で戦いたがるペアなんてめったにいないし。
その点、美月は有利。
美月は一人でいるほうが強くなれる。
だから早くコイツを倒して帰らなきゃ。
そうしたら怒られない。
美月は目を開けた。
目の前の精神空間は美月が作り上げたものである。
そこは、高級クラブを模した華やかな空間だった。
クリスタルのシャンデリアが光を落とす。
先手必勝。
敵を落ち着かせる前に倒してしまいたい。
美月は、男に向かって声を飛ばした。
美月の能力は人魚姫。
その衣装は、上質なシルクを何枚ものフリルが飾ったショート丈のドレス。
そして、その能力は、誰もが聞き惚れる歌声に乗せた音波で攻撃ができること。
全開でやってやる!
美月はピッチを更に上げた。
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