人魚姫 1

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アイツが帰ってくる。 そう思うだけでいつも気が狂いそうになる。 暗いリビングのテーブルに置かれたメモを思い出した。 『一組倒せ』、書かれていたのはたった四文字だったけど、美月の足を震えさせるには充分だった。 ワタルが帰ってくるまでになんとかしないと、ミヅはどんな目にあわされるかわかんない。 美月は、目の前の敵を睨み据えた。 「総ては、女王の名の元に!」 高らかに対決の開始を宣言する。 目の前の男は狼狽えたようだった。当然。 一人で戦いたがるペアなんてめったにいないし。 その点、美月は有利。 美月は一人でいるほうが強くなれる。 だから早くコイツを倒して帰らなきゃ。 そうしたら怒られない。 美月は目を開けた。 目の前の精神空間は美月が作り上げたものである。 そこは、高級クラブを模した華やかな空間だった。 クリスタルのシャンデリアが光を落とす。 先手必勝。 敵を落ち着かせる前に倒してしまいたい。 美月は、男に向かって声を飛ばした。 美月の能力は人魚姫。 その衣装は、上質なシルクを何枚ものフリルが飾ったショート丈のドレス。 そして、その能力は、誰もが聞き惚れる歌声に乗せた音波で攻撃ができること。 全開でやってやる! 美月はピッチを更に上げた。
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