1 ~動物は猫が好き~

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「じゃあ行こうか!」 僕に姿形を真似されたうさぎを逃がしてマビは僕を抱き込む そして ぱんっ! 手を叩いたマビの体は僕の体と一緒に浮きはじめて 僕は知らない感覚に全身を襲われて気持ち悪くなる 「移動の魔法だよ。世界と世界を移動するんだから慣れないうちは気持ち悪いかもね」 そういうマビの顔は涼しげだ しかし そんなのんびりした感想は弾け飛んだ 突然景色が真っ暗になって頭ががんがんと鳴り始めたからだ 唯一見えるマビの体に僕はすがりついた 知らない音、知らない景色 知らない感覚 僕の知ってる五感の全てが今の状況を否定して悲鳴をあげている 怖い 気持ち悪い 全てが寒気立つ 絶えられなくて発狂しそうだと 我慢すらし始めたころ ぱんっ! マビがもう一度手を叩いた さっきより大きな音で 僕はその大きな音で我に返り 力強く閉じていた瞳を開けた するとそこは見慣れた僕の部屋で 唯一違うのはマビがいることと 僕の姿がうさぎなだけで 後は何も変わらない僕の世界に安堵して 体の力がぐったりと抜けてしまった マビは顔は笑ってるけど心配そうに、僕を撫でて大丈夫か聞いてくれた 答える元気もない僕は軽く片耳をあげることしかできなかったけど そしてそのまま僕は目をつむって、マビの腕のなかで眠ってしまうのだった
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