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それから1時間ほど眠っていた僕は
改めてマビに抱えられて僕の世界の街中を歩いていた
いつの間にか日が昇っていて今日が仕事の休日で本当に良かった
しかしマビの服装はとても日本じゃ、というかこの世界では目立ち過ぎる
日本にコスプレという文化があってほんと良かったと僕は思った
「っ!っ!」
「こっち?」
「~っ」
「次はこっちね」
喋られない口で僕は何かを発しながら
ふさふさした白い右手で方向を告げる
近くでチョコレートが買える場所
家から一番近いコンビニを目指して
コンビニに入ってお菓子売り場へと案内した僕は適当に板チョコをくわえてマビに買えとあごで促す
が
マビの顔は僕の顔には向いていない
輝く瞳は種類豊富なチョコレートたちへと注がれている
きっとマビの中のあのチョコレートたちも
ほんとに光り輝いているのだろう
そうじゃなくて!
と僕はマビの腕をぽすっと殴る
「あ、ああ。ごめん、ごめん。つい見とれちゃったよ」
とマビは素直に僕へと向き直ると思いきや
思い当たる全てのチョコを素早く僕ごと腕に抱え込んで
人が並んでいるレジへと目配せするとすかさず並び始めた
僕が渡した財布からお金をだし
初めてとは思えないくらいすらすらと買い物を終える
僕ごとお会計に商品を出したものだから店員は困っていたけど
全身で僕は違うと全力否定すると苦笑いしてお会計を始めた
無駄な支出とマビの身勝手さに
ため息をつく僕をよそに
「チョコレートがたくさん!」
と
マビは幸せそうにチョコレートの入った袋を抱えて僕の部屋へと帰路につく
本当は
ヤーカラからこの世界に戻ってきた気味の悪い感覚が体に残っていて
まだ気持ちが悪かった
そんな僕に
気付いているのかいないのか僕には分からなかったけど
少しだけ、マビの僕を抱える腕が優しかったような気がした
あと、こいつらしいわがままが見れて不思議と普通を感じた
それだけで、気のせいかもしれないけど、そう思いついた僕は不思議と、さっきよりは体が楽になっていた
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