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夢を見た
空を飛ぶ夢
羽もなにもないはずなのに
腕をはためかせると
高度があがった
見下ろす街は広く
人間はありみたいにちびっこい
まっすぐ前を見ると綺麗に流れる雲が道を作っている
まるで迷路の壁のように雲沿いに空を飛ぶ
冷たい風が
はばたいて熱をもった体にあたってここちよい
暑い夏に汗だくの体をクーラーにあてたときのように気持ちいい
また街を見ると
もう街はなく海だった
薄い水色の空
深い群青色の海
大自然を感じさせる景色に僕は胸を打たれた
そしていきなり
本当に打たれたのか
体は傾いて
空を仰ぎ見ながら落下していった
景色はただ水色の空のみ
不思議と太陽は見えない
ひゅんひゅんと音を立てて
景色にも見飽きた僕の心臓が寒くなった
あっという間に街に着いて
僕は地面に叩きつけられた
景色はもう青くない
例えられないおと
どごっというかごとっというか
体の中が光ったように
なにかが激しく走りまわる
苦しい
息ができなくて
吸っているのに
吐いているのに
のどにはなにも通らない
っ っ と
声にならないのに必死に叫ぶ
公園に落ちたのか
目の前には芝生の絨毯
短い草丈の上でさっきまで
はばたいていた腕が力もなく置かれている
体はもう動かなかった
死の覚悟を決めたそのとき
とさっと
音を立てて目の前に物が落とされた
緑色の絨毯の上に茶色いもの
口に入れれば甘い
それはチョコレート
そして遠くから声が聞こえた
「僕、チョコが大好きなんだ」
そこで僕の夢は覚めた
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