当日

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ジャージに着替えた俺は、カーテンの外へ出る。一緒に隈河も出てきた。隈河が掛けている眼鏡を外し、眼鏡拭きで拭きながら言った。 「……女性陣は濡れたまま?僕達はそれでも構わないけど風邪ひくよ?」 「ちょっおい隈河!『達』って何だよ、『達』って!」 カイが激しく反論しているが、顔が妙な赤みを帯びている。 「っ…ッ!何よムッツリ!しょうがないでしょ、着替えが無いんだから!」 「……ところで凪(ナギ)は?」 隈河が聞くと、柳原がピョンピョン跳ねながら隈河を見上げる位置まで付いた。 「ナギちゃん、さっき登校してた時転んじゃってさぁ、今保健室に居るの」 ピシャッ 辺りを真っ白に照らすと共に、同時に起こった轟音に俺は奇声を上げてしまった。 「あ……」 正気に返り周りを見渡す。 「……――何ニヤニヤしてるんだよ!!」 全員が顔を伏せて身体を震わせていた。 柳原が今度は俺の方に跳ねてきた。笑いを必死に堪えている顔をしている。 「意外と可愛いトコあるじゃん~ねーハルカー?」 「なぁっ!?……そんなことより、ナギちゃんの所に行こ!」 遥は足早に教室の外に出ていった。 「あららん、お若いのね~」 柳原は再び跳ねながら教室を出た。 男3人、一気にむさ苦しくなった教室は、激しい雨粒の音を教室中に響かせる。 「……俺達って、こんなに静かだったっけ?」 「さぁ…?」 俺たちは軽く笑ってみせた。  
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