当日

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「……はい、これでお仕舞い」 鮎川はしゃがんで、目の前で椅子に座っている生徒の足に包帯を巻き終わった。 「ありがとアユ先生!」 「時雨さん、雨の日は地面が滑るから気を付けなさいよ?」 「はーい!」 時雨は足をブラブラ揺らしながら、元気に返事をした。 「先生、電話繋がった?」 鮎川はゆっくりと首を横に振った。 「学校の電話も、携帯も繋がらないの。雷で可笑しくなっちゃったのかしら?」 鮎川は微笑みながら時雨を見つめた。時雨もつられてニッと笑った。 その時、雨音に混ざりながら、ノックの音が聞こえた。鮎川が返事をすると、戸が引かれびしょ濡れの2人が保健室へと入った。 「東雲さん、柳原さん!……まだびしょ濡れなのね」 「先生遅いー!獰猛な男衆の中で置いていかないでよ!」 「遥が男衆にレ……んんッ!?」 東雲が柳原の頬をグイグイ引っ張っていた。 「ユウは黙っとこうか」 鮎川は2人に乾いたタオルと、持参しているシャツを2人に着せた。 「雨の日は替えの服を持って来るのよ。学生時代の癖が役に立つなんてね」 鮎川は微笑みながらそう言った。 「先生、東雲さん、柳原さん、こんなの見付けたんだけど……」 そう言うと時雨は机の上から一枚の紙を手に取った。 「絆創膏探しているときに……なんだろ、これ……」 時雨は皆にその紙を広げて見せた。  
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