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「う……ん?あれ……私……」
いつの間にか私は木目の床に伏せていた。地震が起きて、何かの拍子に気を失ったらしい。
保健室の明かりは消えており、先程よりも激しく打ち付ける大雨が、全ての音がかき消していた。
「みんな……大丈夫……?優也……ユウ……先生ー……」
私は壁づたいに立ち上がると、床がミシッと音を発てながら軋んだ。
まだ新しい校舎のハズなのに、こんな年期を感じさせる音を発するなんて、と思っていた時、保健室の明かりがパッと点灯された。
「どこ……此処?」
私は見に覚えの無い、教室であろう部屋にいたのだ。いや、体重計などがあるため、保健室であることは確かだろう。
地震で、物の配置が変わったのだ、と、私は勝手に結論づけた時だった。
「お早うございます」
私は音源を辿り、後ろを振り返った。聞いたことの無い男の声。綺麗に綴られたその言葉に、私は身に覚えの無い寒気を感じた。
椅子に座る男は、体の丁度左半身の髪の毛、上着、ズボンだけが、真っ黒に塗り潰されたような姿をしていた。
学園の関係者の人かな、と、変な趣味をもつ彼から視線を外した時
「…ッ!!ユウ!!」
ソファに横になって、小さな寝息を発てている悠歩の姿が目に写った。
「大丈夫だよ、寝ているだけ」
半身が黒い男は、そう言って笑ってみせた。
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