誘拐【Ⅰ】

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「東雲……大丈夫か、落ち着いた?」 「……ん…ん、ちょっと…」 まだ息の荒い私は、言葉を句切りながら答えた。 「つか、なんでお前ら逃げたんだよ? 大人に会えたんだし、一緒の方が何かと安心じゃね?」 「……」 何故逃げたか。それには答えなかった。 「……ま、言いたく無いならいいけど。てか……この教室」 私たちが入った教室は2-3と書かれていたが、私たちが居た形跡など残ってはいなかった。 「ユウは……落ち…着いたんだ?」 「……少しだけ。アソコに居なければ大丈夫……だと思う」 「どうゆう意味だ?」 悠歩は「さぁ?」とニッと笑って誤魔化した。 一時拡がる沈黙。真っ暗な窓の外から鳴り響く豪雨、カタン カタンと、カイが机の中に手を入れる音が聞こえる。 クシャ と、何かを掴んだ音がするとそれを手元へと引き寄せた。 私と柳原がカイの傍へと寄ってゆく。 「んだ…?この紙切れ……」 「待って…!裏になんか書いてある…見せて!」 ピョンと跳ねて、悠歩はカイの持つ紙切れを掴んだ。その時、悠歩の手がカイの手に触れた。 「――……ッ!!」 「……分かりやすいヤツ」 「うっせッ!!」 顔を赤くするカイを見て、私は頬を緩ませた。なんだか笑ったのはとても久し振り感じ。 「……これって……やっぱり……!!」 柳原の言葉に、私たちは直ぐにその紙切れに目を移した。  
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