誘拐【Ⅰ】

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「……ユウ……ちょっと」 「うに?くすぐったいの?ならばもっと……♪」 「ちょっ…!やっぱ前言撤回!!」 悠歩の両頬を掴んで襲撃を止めた。 今、私達は一階と二階を繋ぐ階段で一息ついている。 既に教室に入って休もうなどという考えは浮かぶハズもなかった。 「に~…ハルカぁ~」 「……」 そしてあれ以来、悠歩はこの調子だ。腕を伸ばしてくる悠歩を私はそれを避けた。 「ちぃ……素早い」 「――ったく、あんたって子は……」 私は小さく息を吐いて、頭を抱えた。 「ユウ……ちょっといいかな」 悠歩は私の言葉に落ち着いたのか、首を傾げて聞き直した。 「……?なに?」 「……あの時」 私は語尾を濁らせながら、ゆっくりと綴った。窓の外から酷い雨音が響き渡る。  
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