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「……ユウ……ちょっと」
「うに?くすぐったいの?ならばもっと……♪」
「ちょっ…!やっぱ前言撤回!!」
悠歩の両頬を掴んで襲撃を止めた。
今、私達は一階と二階を繋ぐ階段で一息ついている。
既に教室に入って休もうなどという考えは浮かぶハズもなかった。
「に~…ハルカぁ~」
「……」
そしてあれ以来、悠歩はこの調子だ。腕を伸ばしてくる悠歩を私はそれを避けた。
「ちぃ……素早い」
「――ったく、あんたって子は……」
私は小さく息を吐いて、頭を抱えた。
「ユウ……ちょっといいかな」
悠歩は私の言葉に落ち着いたのか、首を傾げて聞き直した。
「……?なに?」
「……あの時」
私は語尾を濁らせながら、ゆっくりと綴った。窓の外から酷い雨音が響き渡る。
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