当日

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降り続ける豪雨の中、俺は急いで学校に駆け込んだ。 今日はわが校、相関(ソウカン)学園高等部の学園祭があり、実行委員である俺は他の在校生よりも早く登校しなければいけなかったのだ。 「さっきまで晴れていたのに、今日は中止かな?」 俺はびしょ濡れになりながらも、なんとか昇降口まで辿り着くことが出来た。 もう服が、本来の役目など果たしていないようだった。 「芳野(ヨシノ)くん!」 「……!アユ先生!」 後ろから俺の名字を呼んだ鮎川(アユカワ)先生は申し訳なさそうに言った。 「ごめんなさい……、アナタ達には連絡が届かなかったみたいね……大丈夫?」 俺はアユ先生からタオルを受け取って、身体を拭きながら言った。 「先生……また忘れたんだ?」 先生は照れ笑いを浮かべながらコクリと頷いた。 学園祭が中止になる場合、担任がまず、実行委員に優先的に連絡する必要がある。 それを忘れるとは流石、アユ先生と言ったところだ。 「……先生、アナタ『達』ってことは、他の実行委員も来てるの?」 鮎川先生はもう一度、申し訳なさそうに頷いた。 「ええ、今は実行委員のみんな、教室で服を乾かしているわ」 ……1クラスの実行委員は6人。その全員に連絡し忘れるとは、恐らく教員の中でも鮎川先生だけだろうと、俺は思った。  
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