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執事と言うのは実に興味深い。
主の言うことをなんでも聞き、それを余すところなく全っとうする。
いわば主人専用のなんでも屋さんだ。
茶をいれろと言われれば茶をいれるし、食事を作れと言われればコックをさしおいて食事を作る。
掃除をしろといえば掃除屋さんを雇わなくとも自ら掃除をする。
とにかくなんでも受けいれ、遂行するのが執事の役目だ。
決して逆らうことは出来ないのだ。
「おいヘボ!手が止まってるわよ!」
「は、はい!」
「ほらあっちにまだホコリがあるじゃない!」
「は、はい!」
本当に執事と言うのは興味深い――と思いたい。
「ほらまた手が止まってる!本当トロいわねアンタ!このヘボ!」
「だから僕の名前はヘボじゃなくて・・・」
「あぁん?!何か文句あるワケ?!」
ガラわる!という本心を内に収めてるわけなんですよはい。
「い、いえ。す、すいません・・・」
「謝るくらいなら手を動かしなさい手を!」
「は、はいぃぃぃぃぃ!!」
そもそもなんで俺がこんなことをしているのか訳がわからない。
青春を夢みて田舎を飛びだし、都会にはるばるやって来たっていうのに・・・。
やっていることはただのパシリだ。
大体本来こんな場所にやってくるはずではなかったのだ。
本当なら今頃新居でぐでーとだらーと過ごしているはずだったのに。
――はぁ、こんなはずじゃ・・・ここはびしっと言わないとな!男として!自信?あるわけがないだろう(微笑)
「あ、あのさ・・・!」
「ああ?!」
女性とは思えない彼女の口ぶりは、先程まで(若干)強気だった気持ちがシュルシュルと音をたてて縮じこんだ。恐えェよ!
「あ、えっとですね・・・僕は間違えて・・・ここに来ちゃったっていうかなんていうか。えっとぉ・・・そのぅ・・・あのぅ・・・」
「んぁあもう!!言いたい事があるんならハッキリ言いなさいよハッキリと!あなたそれでも男なワケ?!」
「は、はい!えっと、実はですね、僕は執事じゃなくて本当は間違えてここに・・・・っていねぇし!!!」
目の前に彼女の姿は無かった。
あうとおぶがんちゅーってやつですか?
「あ、はい!依頼ですか?」
部屋の外から彼女の声がする。また依頼か?
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