天国と地獄・・・

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 どんなに待てど両親が帰ってくる気配はなかった。 いつもなら二人共帰ってくる時間だ。 「そういえばむいむいも帰ってこないね」 美鈴がぼそっとつぶやく。 たしかに向井が買い出しに行ってかれこれ三時間は経つ。 いいかげん帰ってきてもいい頃だとは思うが。  そのとき電話が鳴り響いた。 驚いた三人は顔を合わせ、沙織が受話機をとった。 「もしもし」と沙織の声だけが部屋に響く。 その瞬間、沙織の息をのむ音がはっきりと聞こえた。  しばらく電話の相手と短い会話を済ませ、受話機を置いた途端、沙織ががくっと崩れ落ちた。 「おねーちゃん!?」 私と美鈴が驚いてかけよる。 「相手は誰だったの?」 私がおそるおそる聞く。 「・・・・・・警察の人」 ぼそっと沙織がつぶやいた。 「警察?なんで警察がうちに 電話?」 美鈴が疑問をうかべる。 「・・・・・・が」 再び沙織がつぶやく。 「え?なんて?聞こえなかっ たよおねーちゃん」 美鈴が聞きかえす。 「お父さんとお母さん が・・・」 「え?」 「お父さんとお母さん が・・・・・死んだ・・・」 嵐が近づく暴風雨の中でその言葉はとてもはっきりと、そして鮮明にこの部屋に響いた。
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