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警察によると両親は自殺したらしい、車に乗ったまま自ら海に飛びこんだと聞かされた。
雨の中、そうしきで三人は母と父の遺骨をひろった。
私と沙織は泣くことはなかったけれど、美鈴はわんわん泣いてしきりにお父さん、お母さんとつぶやいていた。
「やーねー三人の子供を残していくなんて」
「なんでもあの家、詐偽にあったみたいよ。それでお金に困ってたみたい」
「あらそうなの?かわいそうに・・・犯人は捕まったの?」
「いいえ。それがね、その犯人の名前が”向井 徹”ってわかってるらしいのよ。だから・・・」
「え?でも向井 徹って草方さんところの執事じゃ・・・」
「うそだ!!」
突然美鈴が叫んだ。
「美鈴!」
沙織が止める、が美鈴はその手を振ほどく。
「うそだうそだ!むいむいがそんなことするはずがない!うそをつくなぁ!!」
そういっておばさんをぼかぼかとなぐりつける
「な、なんなの?」
おばさんたちが不審な目つき
でこちらをみる。
「すみません、この子、今ちょっと精神が不安定なんです」
そういって私は美鈴をむりやりひきはなす。
「むいむいはそんなことしない!ぜったいに!皆がうそを言ってるだけだぁ!!皆なんか・・・皆なんか!死んじゃえばいいんだ!!」
ぱぁん!と、湿った空気にかわいた音が響いた。
私を含め、周りがざわめいた。
沙織が美鈴の頬をひっぱたいたのだ。
「お、姉・・・ちゃん?」
美鈴はひっぱたかれた頬を押さえながら、突然の事にあぜんとしていた。
「いいかげんにして!誰かを責めてお父さんとお母さんが戻ってくるの!?違うでしょ!
誰かを責めたって何も変わりはしないのよ!お父さんとお母さんは死んだ!死んだのよ!もう戻ってこない!
いつまでもそのことにしがみついてんじゃないわよ!」
私自身とても驚いていた。
沙織はひっぱたくどころか怒ったこともなかったのだ。
沙織が美鈴の肩をつかむ。
「いい?これからは私達だけで生きていくのよ。だれの力も借りずに。
大丈夫、お姉ちゃんがしっかり守ってあげるから。どんな悪い奴がきてもお姉ちゃんがおっぱらってあげる。
だから、安心しなさい」
沙織が優しくささやきかける。
美鈴の目からは大つぶの涙がぼろぼろとこぼれおちた。
「おねぇちゃぁん!」
二人はだきあい。美鈴が泣きやむまでその手をはなすことはなかった。
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