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「いや~、だーいせーいこー。大成功」
死地に放り込まれたはずの祐馬がそこに見たものは、ある意味驚愕の光景だった。
「やっぱりな~、やっぱり怖いんじゃないかと思ったんだよね~」
即席で作ったのであろう出来の悪いプラカードには汚い文字で『ドッキリ』と書かれている。
「これで、『俺に怖いものはない』、なーんて言わせないよ~祐馬」
荷物の上に寝転んでいた山田さんがコロコロと笑顔を見せ、部屋の外からも多数の爆笑が渦を巻いている。
目が点になるとはこの事だろう。彼が状況を理解するのにかなりの時間を要した。
――そうだ、こいつはそういう奴だった。
洋次はテニス部員や担任まで巻き込んで、彼を騙しにかけたのだ。
――信じられない。
部員担任一同が三々五々散っていた後も彼はその場から微動だにできなかった。
花火をすると、誰かが呼びに来ても無視した。
明りの消えた部屋に一人。
傷心の男は窓に目をやる。
人は己の痴態を確認したくなるものだ。
そこには、当然自分が映る。
だが、それと同時に何か白いもやが彼の背後にあることにも気がついた。
「っか……」
彼の叫びは誰にも届かず。暗い部屋に封じ込められた。
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