幽霊なんか怖くない

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日中のうだるような暑さをくぐり抜けて、ようやく辺りはわずかな冷気を伴って暗くなった。 「肝試しってよぉ、今時流行んねーだろ実際」 部屋の隅には山と積まれたスポーツバックが壁面を隠している。 そこに埋もれるようにもたれかかった少年が、さもかったるそうに愚痴をこぼす。 やや茶色がかった長めの髪をカチューシャで留めている。 「肝試しに流行りとかあるの?」 それに応じるのも少年だった。普段使い慣れない急須から、小さな椀にお茶を注ごうと四苦八苦している。 先の少年が野性的な印象を与えるのに対し、こちらは端然とした佇まいだ。 「知らねー、てか、めんどー。なあ、洋次。フケちまって、モンハンやらねぇ?」 洋次と呼ばれた少年は、二人分入れ終えたお茶をフーフーと冷ましながらチビチビと口にする。 「やらない。もしかして祐馬、怖いとかって事ないよなあ」 祐馬は明らかに動揺したようで、動いた拍子に左右から崩れ落ちてきたバックに埋もれてしまう。 「ば、ばば、バカ言うな。この俺が幽霊怖いなんてことあるかぁ!」 足掻いて脱出を果たした祐馬はニヤリと勝ち誇った笑みに出会う。 「幽霊なんて僕は言ってないぞ」
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