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「うるせぇよ、俺様に怖いもんなんてあるわけねーだろ実際」
祐馬の焦りを含んだ声が閑散とした室内にこだまする。八畳には二人だけで、同室の者はすでにロッジ前の広場に集合しているのだ。
「どうだかね」
わざと祐馬の目を見ずに眩しいほどの月明かりがそそぐ窓外に目線をやり、童顔に似合わないニヒルな表情を作る。
「フン、便所行ってくる」
満月が孤島を照らし、歩く程度は懐中電灯も必要ないだろう。
手ぶらで離れのトイレまで出てしまった。
「ったくよ、なんでわざわざこんなとこにしやがったんだよ」
一人厠で用を足しながら呟く。
ちなみに、トイレといっても、大便は今時汲み取り式で汚い個室。小便は屋外で、申し訳程度に横から見えないように仕切ってある。
女子部員はさぞかし閉口しているだろう、と祐馬は憎からず想っている恋人の事を思い出した。
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