幽霊なんか怖くない

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扉を開けると、二人の姿はもう玄関ロビーには見当たらなかった。 代りに壁にぼんやりとした白い煙の塊のようなものが浮かんでいた。 「おいおい、冗談じゃないぜ実際」 まさしく山田さんが話していた物体と符合するそれは、しばらく浮遊すると上階へと吸い込まれるように消えてしまった。 「舐めやがって、鬼さんこちらってか?」 心の方ではすでに怖気がついていたが、そんなものは存在しないのだ、という反発心だけを叱咤鼓舞するように祐馬はうそぶいた。 そして、重たい足取りで階段を踏み出した時、 「ぎぃぃぃやぁぁぁぁ」 あれは、山田さんだろうか、女性の絹を裂くような鋭い悲鳴が上から聞こえる。 続いて、 「うおぉぉぉぉぉぉっ」 という、雄たけびとともに、上階から迫るけたたましい足音が近づいてくるのだ。 これで、完全に心が折れた。 祐馬は膝の力が抜け、祐馬はその場にくず折れてしまった。 野太い声とともに迫るのは猪田だった。 彼はしきりに来い、来い、と腕を引っ張る。 固辞してもしつこいので、しかたなく祐馬は引きずられて行くことにした。
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